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質問箱より Q2「ディーゼル10の動機について」

研究・考察
06 /20 2016
○Q
 ディーゼル10が蒸気機関車の破壊を目論んでいる理由は何か。彼と蒸気機関車の間に何らかの事件があったのか。

○A
 長編第1作『魔法の線路』(以下TATMR)に登場して以来、トーマスシリーズ中でも屈指の悪役とされているディーゼル10。彼は同作中で「ソドー島の蒸気機関車をバラバラにぶっ壊す」という旨の発言をしていますが、その動機については本編で言及されておらず、解釈が分かれるところです。反蒸気機関車的立場にいる他のディーゼル機関車のことなども踏まえながら、考えられる説を列挙してみます。
(A)差別説
 ディーゼル261(クラス40)や原作の199号、オールド・スタックアップなど、トーマスワールドに存在するディーゼル機関車の大半が該当すると思われる説です。多くのディーゼル機関車達は、自分達よりも性能が劣る蒸気機関車達のことを本能的に目の敵にしています。しかもこの性質は低性能のディーゼル機関車にはあまり見られず、特に大型の高性能機関車に顕著です。無論、ディーゼル10もかなり性能が高く車体も巨大。また、先ほどTATMR本編でディーゼル10の発言の理由は明かされていないと書きましたが、同作公開前年の1999年に、当時『きかんしゃトーマス』の監督であったブリット・オールクロフト女史が執筆した脚本草稿には、実はディーゼル10がスプラッターとドッヂにそれらしい理由を語る場面があるのです。(※意訳あり)

ディーゼル10「あの蒸気を吐くポンコツの屑鉄共を痛い目に遭わせてやるんだよ。この島にあいつらは必要ねえ、必要なのはディーゼル機関車様だ。今日日蒸気機関車なんて用なしさ、奴らは時代遅れなんだからな」
スプラッター&ドッヂ「けど少し……ちょっと問題がありますぜ、ボス」
ディーゼル10「あのキンキラ野郎のことを言ってるのか?奴にも言うことを聞かせてやるさ、このピンチーでな」

 従ってディーゼル10の蒸気機関車破壊計画は、スペック面において彼が蒸気機関車に抱いている差別意識が原因であると考えられます。しかし、この意識は他の多くのディーゼル機関車にも共通して当てはまるもの。仮にも最強最悪とまで謳われた彼の行動原理は、果たしてそんなにも在り来たりなものなのでしょうか。あるいはスプラッターとドッヂを納得させるために表面的な理由しか説明しておらず、深層には他のディーゼル機関車とは一味違う特殊な理由があるという可能性も否定できません。
(B)出自説
 上に挙げた(A)の差別説は、ディーゼル機関車として生まれたが故に半ば運命的に背負った蒸気機関車への差別意識がディーゼル10を含む多くのディーゼル機関車の根幹にあるということを前提としています。しかし、蒸気機関車を全て破壊するというディーゼル10特有の過激な目標は、彼と彼以外のディーゼル機関車との間にある違いからきているものなのではないかとも考えられます。ではその決定的な違いとは何か。一言で言ってしまえば出自です。具体例を挙げると、まず第一にディーゼル10の頭上に付いている巨大なシャベル「ピンチー」。このピンチーに関しては謎が沢山あります。いつ(製造時?製造より後の改造時?)どこで(製造された工場で?ソドー島で?他の場所で?)誰により(設計者?トップハム・ハット卿?それ以外の改造者?)何の目的で(事故処理?スクラップ処理?)装備されたものなのか、本編でも脚本草稿でも説明はされていません。しかし、その独特な形状や、長編第2作『みんなあつまれ!しゅっぱつしんこう』(以下CAE)でスクラップ処理に用いられていた点を見ると、ポジティブな理由で装備されたものとは考えにくい部分があります。ところで、精錬所で働くスクラップディーゼルのハリーとバートは、蒸気機関車の廃車に携わるその肩書き故に「残酷な死の使者」と呼ばれるほどの冷徹な性格を持っています。スクラップ置き場で働くクレーンのレッジは機関車達に対しては友好的ですが、スクラップを粉砕する仕事に慣れているため物を壊すことを一切躊躇しません。もしピンチーが最初からスクラップ処理のような目的のために付けられた物だったとしたら、ディーゼル10も彼らと同じく職業の特異性が性格や思想に影響したことで蒸気機関車の破壊に執着を持つようになったのだと考えられるかも知れません。職業の他にディーゼル10特有の出自要素として挙げられるものがあるとすれば、出身地です。ディーゼル10のモデルとなったイギリス国鉄クラス42は1958〜61年にかけてスウィンドン工場で製造されましたが、ディーゼル10の経歴をここに当てはめて考えてしまうのはナンセンスかも知れません。通常のクラス42とは明らかに異なるピンチーという特殊な装備を施されている以上、ディーゼル10は他の同型機とは全く別の時期に全く別の工場で製造された試験車両である、という可能性も否定することはできないからです。従ってディーゼル10はどこで生まれた機関車であってもおかしくないのですが、ここで着目したいのは彼の“訛り”です。日本語版ではドナルドとダグラスなど一部のキャラクターを除いてあまり吹き替えに反映されませんが、英国版や米国版ではキャラクターに個性を持たせるためナレーターや声優がキャラクターの台詞を訛らせることがよくあります。各キャラクターの設定など一切考慮せず声優がいい加減な訛りを与える場合もありますが、出身地などの設定に基づいて適切な訛りを与えている例も多々あり(ドナルドとダグラスのスコットランド訛り、スカーロイとレニアスのウェールズ訛り(長編第7作以降)、オリバーのコーンウォール訛り(第18シーズン以降)等)、訛りはキャラクターの出自を考える上で役立つ要素です。さてディーゼル10の場合を見てみると、当初ディーゼル10はオーストラリア人声優のキース・スコットによって演じられ、イギリス上流階級訛りでした。その後、諸事情により声優が変更され新たにディーゼル10を演じることになったカナダ人声優のニール・クローンは、試写会版ではロシア訛りで演じましたが本編ではニュージャージー訛りに変更しました。このような事情を鑑みると、ディーゼル10の出身地については様々な説が考えられ、彼の性格についても、他のディーゼル機関車と大きく異なる環境で育ったことによって生まれた特殊な経歴が原因なのではないかと推測することができます。また、バーネット・ストーンが「以前レディーは意地の悪いディーゼル(=ディーゼル10)に痛めつけられた」と語っていることから、ディーゼル10がかつてシャイニング・タイムや魔法の線路を訪れたことがあるという可能性も考えられます。シャイニング・タイムの所在地はアメリカである可能性が高く、前述のニュージャージー訛りとも一致しますからね。このような説は次の因縁説にも関係してきます。
(C)因縁説
 トーマスシリーズに登場した最初のディーゼル機関車であり今なお悪役として活躍している意地悪なディーゼルは、来島当初からディーゼル機関車の優位性を主張していました。しかし、だからと言って当時から蒸気機関車の存在を全面的に否定していたかと言うとそうではないように思われます。ディーゼルがその陰湿な本性を現したのはダックの悪巧みによって貨車を壊し恥をかいた直後であり、いわばディーゼルが今日のような憎まれキャラを確立したのはダックのせいであると言っても過言でないのではないでしょうか。このディーゼルと同じようにディーゼル10も蒸気機関車と何らかのトラブルを起こしたことが原因で蒸気機関車を恨むようになったのではないか、というのがこの因縁説です。トラブルの具体的な内容については本編で語られていないため憶測する他ありません。質問者様が挙げた例も一説として考えられます。しかし、ここで一つ特筆しておきたいのは、ディーゼル10の目的が「ソドー島の」蒸気機関車をバラバラに破壊することにあるということです。何故ソドー島に限定されているのでしょうか。「イギリス本土などと比較してソドー島に蒸気機関車の数が多いから」と考えれば(A)や(B)の説でも問題ありませんが、そうではなく別の理由があったとしたらどうでしょう。TATMRの世界観では、ソドー島は魔法の機関車レディーの魔力によって繁栄している魔法の島であるということになっています。同作中でディーゼル10がレディーの破壊を企んでいたのも、ソドー島から魔力を失わせることにより蒸気機関車を壊しやすくすることが全ての目的であったようです。つまりディーゼル10には、強力な魔法を持つ機関車をバラバラに壊してまでソドー島の蒸気機関車を殲滅したい動機があったということになります。それに加え、トーマス達の「僕ら蒸気機関車の天敵が戻ってきた」といった発言からしてディーゼル10は以前にもソドー島にいて悪さをしていたと思われるため、ディーゼル10が蒸気機関車に恨みを持つような特定のトラブルがあったのだとすれば、それはソドー島で起こった出来事であるという可能性が極めて高いでしょう。しかし、見落としてはならないことがあります。当初の脚本草稿では、ディーゼル10はソドー島に初めて来た新しい機関車でありトーマス達とも初対面であるという設定になっていました。本編で設定が変更された理由については、人間の悪役として登場するはずだったP・T・ブーマーの登場場面が全てカットされその設定の一部がディーゼル10に輸入されたことが大きいのですが、設定変更前の草稿の段階からディーゼル10が蒸気機関車全車破壊を計画していたことを踏まえるなら、やはりソドー島との因縁という発想は説としては弱く、(A)や(B)の説の方が有効であるように思われます。ならば逆に、ディーゼル10はソドー島以外の全ての場所で蒸気機関車を破壊し尽くしてしまい、レディーに守られているソドー島だけが最後に残っている状況だった…などという恐ろしい説も考えられないことはありません。
(D)逆差別説
 長編第6作『ディーゼル10の逆襲』(以下DOTD)では、ディーゼル10の計画の下に複数台のディーゼル機関車達がソドー整備工場を占領しています。この占領は、蒸気機関車に比べディーゼル機関車の扱いが悪いソドー島の現状にディーゼル機関車達が不満を感じたことに端を発するトップハム・ハット卿への抗議運動という意味を持っていました。原作でもテレビ版でも、イギリス本土でディーゼル機関車が隆盛を誇るにつれソドー島では逆に蒸気機関車の保護意識が増し保存鉄道的な性格が強まっていく様子が描かれています。つまり、ソドー島ではイギリス本土の状況と対照的にディーゼル機関車の方が差別されているというわけです。さてこの時、ディーゼル10はトップハム・ハット卿や整備工場監督のビクターがいない隙を狙って騒ぎを起こすということを重視していました。TATMRでも、ディーゼル10はトップハム・ハット卿が休暇で島にいない期間を自分の目的を遂げる大きなチャンスとして考えていた様子であり、そうなると行動の動機もDOTDと似たものであった可能性が挙げられます。しかし、TATMRではディーゼル10とスプラッターとドッヂ以外のディーゼル機関車が登場していないこともあってソドー島でのディーゼル機関車差別があまり強調されておらず、しかもそれ以前に、TATMRより後の作品であるDOTDからディーゼル10の行動原理を推測するのは無意味ではないか、と言われてしまえばそれまでです。ただ、そこで一つ提示しておきたいのが次の説です。
(E)未来説
 TATMRは通常のテレビシリーズと異なる世界線を描いたパラレルワールド作品なのではないか、という考えは以前からファンの間に存在しています。勿論それも説としてはアリでしょうが、今回はあくまでテレビシリーズもTATMRも同じ世界線上の物語であるという前提で考察をすることとします。ですが、世界線は同じでも劇中の時期が通常のテレビシリーズと大きく異なるという考え方はできないでしょうか。すなわち、TATMRの時代設定がテレビシリーズよりもずっと未来なのではないかという説です。そもそも原作『汽車のえほん』の第1巻の時代設定には1920年代説と1940年代説があり、テレビシリーズ開始時の時代設定もそれと同じであると考えられます。また、長編第3作『トーマスをすくえ‼ ミステリーマウンテン』(以下TGD)では劇中に登場した新聞記事から、長編第5作『ミスティアイランド レスキュー大作戦!!』(以下MIR)ではエンディングに登場したカレンダーから、それぞれ時代設定が1955年と1960年であることが判明しています。従って、本来であれば長編第1作であるTATMRの時代設定は1920年代〜1955年のいずれかの時期となるはず。ところが、同作中のリリーと母親が町を歩くシーンで1990年代製と思われる自動車が走っていたり、リリーが列車に乗っているシーンで1990年代以降に普及したノートパソコンを使っている乗客がいることなどから、同作の時代設定は作品制作時期とほぼ同じ1990年代後半〜2000年頃と考えた方が妥当であり、その場合はTATMRが他のテレビシリーズのエピソードより遥かに未来の話であるということになります。因みに、ソドー島の時間が過去、シャイニング・タイムの時間が未来であり両者を結ぶ魔法の線路がタイムマシンの役割を果たしているのではないかとするタイムスリップ説も存在しますが、ここではディーゼル10の件と関係がないため割愛します。さて、上記のような事情によりTATMRが通常のテレビシリーズより未来を描いた作品であった場合、ディーゼル10が登場する作品を時系列に沿って並べると CAE→TGD→MIR→DOTD→「きえたクリスマスのかざり」(第17シーズン)→→TATMR となります。CAEのディーゼル10は、機関車達から恐れられてはいるものの少々気難しいだけで根はいいディーゼル機関車として描かれました。そこからTGDにかけて他のディーゼル機関車との交流を深めることによりMIRやDOTDや「きえた〜」では(D)に挙げたようなディーゼル機関車差別への不満を募らせるようになり、そして最終的にはTATMRでトーマス達から天敵呼ばわりされるほど凶悪化するという流れが完成します。ディーゼル10が劇中で「蒸気機関車を全てバラバラにする」という目標を掲げている作品は前にも後にもTATMRのみですから、つまりCAE以降のディーゼル10登場作品では、彼が後に突き進むことになるであろう蒸気機関車破壊計画に向かって現在進行形で動機付けが成されているということになりますね。もっとも、現在進行形であるがために今後のテレビシリーズの成り行きによっていくらでも真偽が覆り得るのがこの説の痛いところですが。
 しかしどの説を取るにせよ、ある程度は視聴者の想像力に委ねられる部分が大きいように思われますね。以上、私なりに考えを述べさせていただきましたがいかがでしょうか。

参考資料

□文献
○『汽車のえほん(The Railway Series)』ウィルバート・オードリー及びクリストファー・オードリー著
・第12巻『ダックとディーゼル機関車(Duck and the Diesel Engine)
・第18巻『がんばりやの機関車(Stepney the "Bluebell" Engine)』
・第23巻『機関車のぼうけん(Enterprising Engines)』
・第28巻『James and the Diesel Engines』

□映像
○『きかんしゃトーマスとなかまたち(Thomas and Friends)』ガレイン・エンターテインメント及びヒット・エンターテインメント制作
・第38話「ディーゼルがやってきた(Pop Goes the Diesel)」
・第39話「ディーゼルのわるだくみ(Dirty Work)」
・第103話「ディーゼルとぼうし(Bowled Out)」
・長編第1作『魔法の線路(Thomas and the Magic Railroad)』
・長編第2作『みんなあつまれ!しゅっぱつしんこう(Calling All Engines!)』
・長編第3作『トーマスをすくえ!! ミステリーマウンテン(The Great Discovery)』
・長編第5作『ミスティアイランド レスキュー大作戦!!(Misty Island Rescue)』
・長編第6作『ディーゼル10の逆襲(Day of the Diesels)』
・第411話「きえたクリスマスのかざり(The Missing Christmas Decorations)」

□ウェブサイト
Thomas the Tank Engine Wikia
Sodor Island - A Thomas Fan Site
Wikipedia(英語版)

執筆:2015年4月某日
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Konkon

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きかんしゃトーマスが好きなだけの一般人。よろしくお願いします。