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質問箱より Q5「「しんじられるきかんしゃ」の事故現場について」

研究・考察
08 /17 2016
○Q
「しんじられるきかんしゃ」の回でトーマスが事故を起こした場所はどのような場所なのか。また、トーマスがそこへ貨車を運ぼうとしていた理由は何か。

○A
 第3シーズンの「しんじられるきかんしゃ」で、ジェームスの仮病により代わりに彼の貨車を運ぶことになったトーマスは、間もなく下り坂で貨車に押され暴走、最終的に池にある艀のような物に乗り上げて泥濘に嵌まりました。この池はどこにあり、トーマスは何故そこへ向かっていたのか。その謎の手掛かりを掴むため、まずはこの池の位置を特定するべく「しんじられるきかんしゃ」内でのトーマス達の行動やストーリーの流れを順を追って見てみます。なお「しんじられるきかんしゃ」はテレビ版オリジナルのエピソードですので、ここではソドー島の地図として、2014年秋に番組鉄道顧問サム・ウィルキンソン氏によって発表されたテレビシリーズ版の地図を参照します。無論、この地図に示された各スポットの位置解釈と「しんじられるきかんしゃ」が公開された1991年時点での制作陣の解釈とは異なる点もあるでしょう。しかしながら、当時の制作陣の舞台設定に関する認識が明確な形として残っていない以上、ここでは2016年8月現在最も情報量が多く緻密な上記の地図を用いるのが適当と考えます。とは言え、「しんじられるきかんしゃ」はテレビ版オリジナルエピソードの中でも比較的初期のものということもあってか、ソドー島の地理に関する面ではかなり原作に忠実であり、考察の支障となる点もさほど多くはないと思われます。
 さて、まずエピソードの冒頭で、トーマスはアニーとクララベルを牽き、ロアー・アールズバーグ駅付近にある湖畔の路線を走っています。つまりトビーの支線ですね。その後、道路沿いの単線区間でバーティーに会った後、次の駅(トリレック駅)で再び彼に会っています。故にここまでのシーンでは、トーマスは旅客列車としてトビーの支線を東進し、アールズデール・エンドで自分の支線に入ってからナップフォード方面へ進んでトリレックまで来たであろうことが推測できます。この後のトーマスの行動については、日本語版では「次の駅へ向かった」と述べられていますが、原語版では「made his way along the branch line towards the big station by the sea(海のそばの大きな駅へ向かって支線を走った)」となっており、必ずしも次の駅とは限らないことが分かります。トーマスの支線の中で海辺にある大きな駅はナップフォード駅のみ。そこから更に本線やダックの支線を北上すればティドマス駅やアールズバーグ・ウェスト駅もあるのですが、ここではトーマスが島の西部に向かったことだけ押さえておけば良いでしょう。彼はその後、どこかでアニーとクララベルを切り離してからジェームスとゴードンのいる操車場で貨車の入れ換えをしています。ジェームスの「パーシーが港(harbour)に行っちゃうから」という発言からして、この操車場も海の近く、すなわちナップフォードかその付近にある可能性が高いです。それからトーマスは、ジェームスの代わりに貨車を牽いて石切場へ向かいます。この石切場がどこの石切場なのかがポイントです。ですがこれについては後回しにするとして、石切場で石を積んだトーマスは「接続駅へと向か」いました。原語版では「set off back to the junction(接続点へ戻るため出発した)」となっていることから、ここでの「接続駅」は既にトーマスが一度経由した場所ということになりますので、先ほど登場した操車場のことと思われます。故に、今回問題となっている事故現場の池はナップフォード付近〜石切場の区間にあることになります。さて、2014年にヒット・エンターテインメントとファンサイトSiFが実施したアンケートによれば、この事故現場の池にはキャラン池(カラン池/カレン池、Callan Pond)という名前が付いているとのこと(現在このアンケートの内容は既に削除されています)。これを理由としてファンサイトThomas the Tank Engine Wikiaはキャラン池の位置をキャラン駅付近、つまりピール・ゴッドレッド線上だと断言しています。確かにキャラン付近には川や湖のような水辺もありますが、私はこの説を間違いだと考えます。第一の理由として、島の西部から出発してキャランを通過した場合、その先にあるのはカレン城(キャラン城)のループ線のみで、石切場などは存在しないからです。キャランの南東数kmの位置にはソドー・スレート採石場とブルーマウンテン採石場がありますが、ナップフォード付近とこれらの採石場とを往復するのにキャランを通る必要はありません。第二の理由として、トーマスが石切場から戻る途中に通った木橋のことがあります。この橋は、同じ第3シーズンの「トビーのつなわたり」においてファーカー採石場(アノファ採石場)からの石を運んでいたトビーが事故を起こすファーカー付近の橋のセットにも使われており、このことを考えれば今回トーマスが石を運び出した石切場もファーカー採石場以外に考えられないでしょう。実際、石切場のセットも「トビーのつなわたり」と同じ物が使われています。そうであるならばキャラン池もファーカー〜ナップフォード付近、つまりトーマスの支線上かその周辺にあると見るのが至極妥当なのですが、もっとも、同じセットを利用しただけで実際にはよく似た別の橋および石切場であるという可能性も否定はできませんよね。また、キャラン池という地名についてはどう説明を付けるのでしょうか。こういった疑問を解決するためソドー島の地理を更に詳しく見てみると、島内にはピール・ゴッドレッド付近のキャラン以外にも「キャラン」と関わりの深い地名が存在するのです。一つはトーマスの支線に沿って流れるキャラン川。ハッケンベック付近から発してエルスブリッジ付近でエルス川に合流する、原作設定の段階から存在する川です。もう一つはキャランデール。ティドマス郊外、環状線上にある駅でティド川が流れる谷間にあり、「デール(dale)」はイングランド北部の言葉で「谷」を意味します。距離が離れていますので確証はありませんが、キャラン川が地名の由来である可能性が高そうです。というわけで、どちらもナップフォード付近とファーカー採石場を行き来する際に通過することが可能な場所であると分かります。更に地図をよく見てみると、トーマスの支線のエルスブリッジ〜メイスウェート間に、キャラン川から線路に被るような形で池ないし湿地のような場所があることが確認できます。地図上に記述はありませんが、恐らくここがキャラン池ではないかと私は推測します。
 さて、キャラン池の位置特定にかなり時間をかけてしまいましたが、ではトーマスの支線上にあるであろうこの事故現場はどのような場所で、トーマスは何故ここへ向かっていたのでしょう。まずは、トーマスが池に続く線路へ進入したのはダイヤ通りだったのか想定外の出来事だったのかを明確にしておく必要があります。すると、「しんじられるきかんしゃ」の日本版および英国版では特に言及がありませんが、米国版のナレーションでは、貨車がスピードを上げるよう喚声を上げた直後に「They pushed Thomas over the switches(彼らはトーマスをポイントの向こうまで押し出した)」と説明が入ります。ここから、貨車が下り坂で急にトーマスを押してスピードを上げたために(大方ポイントの切り替えが間に合わず)列車が本来の予定とは異なる路線に進入し、しかもトーマスの機関士がそれに対処するだけの暇がなかったのが原因で事故が起きた、と推測することが可能ですね。ナレーションのタイミングが遅いのと、ポイント通過後もしばらくトーマスが笑顔でいるせいで、一見して進入自体もダイヤ通りのように思えるかも知れませんが。したがって、当初トーマスの列車は別の路線、恐らくは池を避けて走る路線(=事故後にダックが走っていた路線)へ進む予定だったのだと考えられます。また、こうした事情から池を避ける方の路線がトーマスの支線の幹線であって、事故現場へと続く路線は別線もしくは廃線跡であろうと推測することも決して飛躍のしすぎではなかろうと思います。
 続いて、事故現場の状況について。トーマスが誤って進入した下り坂の線路の末端には小屋と標識と車止めがあり、その向こうには『ミスティアイランド レスキュー大作戦!!』に登場した筏(厳密には艀)とよく似た小型の艀らしき物があって、鎖で岸に固定されていた様子。艀の上にはレールが敷かれ、前部には車止めのような物が付いていました。トーマスが岸の車止めを突き破ってこの艀に乗り上げると、艀は揺れ、鎖が外れると同時に前方へ水平移動して向こう岸に衝突しました。向こう岸には直線の線路が続いていてそこから待避線らしき線路が分岐しており、待避線の方には車止めがあったのに対し艀と接した線路の方にはありませんでした。さて、上に敷かれたレールの他、固定用の鎖の存在や事故時の不安定な揺れ方、移動のスムーズさなども考慮するに、この艀および周辺の諸物は最初から鉄道車両を反対の岸まで輸送することを目的とした施設と見て差し支えないと思われます。ただし、車両の通行を妨げる車止めが二つも設置されている点や周囲に人がいない点からして、「しんじられるきかんしゃ」の時点では前後の線路も含め使われていない設備だった可能性が高そうです。しかし、艀の後ろの線路へはトーマスが進入しましたし、前の線路は救助シーンでエドワードとクレーン車が使用していたため、いずれの線路もトーマスの支線の幹線に合流しているであろうことが推測できます。そして、この艀を使う線路が直線であるのに対し池を避ける方の線路は大きく迂回している点を見ると、先に前者の線路が敷設され後から後者の線路が敷設された可能性も高いものと考えられます。つまり、最初は前者をトーマスの支線として用いていたが、何らかの不具合が生じたため新たに敷設された後者が使われるようになり前者は廃線化した、という説が現実味を帯びるわけです。
 それではこのような説を採る場合、この施設は何故作られたのでしょうか。そもそもまず、池(pond)には大きく天然のものと人工のものとがあります。キャラン池がどちらなのか見た目で判断することはできませんが、どちらであっても不思議ではないでしょう。トーマスの支線の沿線には田園が多いですから、農業に使う人工の溜め池という可能性は考えられます。またもし天然であるならば、キャラン川に隣接しているところからして、豪雨等による川の氾濫が原因で浸水した氾濫原がそのまま池として残った、という説も有力と言えそうです。いずれにせよ、ヒキガエルが住み着いている点から察してもそれなりに前からある池だと思われます。こうした可能性を考慮した上で、キャラン池の設備が作られた経緯として個人的にそれらしいと思うのは次のようなものです。トーマスの支線の開通前、線路が敷設される直前または直後にキャラン川で洪水が発生し、支線のルートの一部が浸水したまま池として残ってしまった。橋を建設したりルートを迂回ルートに変更したりするだけの経済的ないし時間的余裕はなかったため、応急措置として車両を一台ずつ渡らせるための鉄道艀を池に浮かべた……というもの。実際、トーマスの支線ことファーカー線の中でもエルスブリッジ以東の区間が建設されたのは1924年から25年にかけてで、辛うじてトーマスの前任車であるコーヒー・ポット機関車達が働いていた時期に当たります(テレビ版では原作より早くに引退していた可能性も高いですが)。コーヒー・ポット機関車は一度に大量の重い車両を牽くことができませんでしたから、もしも軽い車両を一台ずつしか移動できない艀が路線の途中にあってもさほど不自由することはなかったろうと思います。
 最後に、この施設が使われなくなった理由に関して。1924,25年という年は前述のコーヒー・ポット機関車が引退しつつあった時期であると同時に、ジェームス救援作業に貢献したトーマスが新たに担当機関車として着任した時期でもあります。コーヒー・ポット機関車引退の原因としては、石切場から重い石を運ぶには牽引力が不足していたことと、石の運搬中に坂道でブレーキが上手く効かなかったことが挙げられるようです。池に艀を設置してはみたものの、下り坂の下にあってコーヒー・ポット機関車のトラブルの原因となったため止むを得ず迂回ルートを建設したのかも知れません。もしくは、コーヒー・ポット機関車よりも重くて大量の貨車を運べるトーマスが運用の中心となったために艀ルートの使用は不都合だと判断されて廃止されたのかも知れない、とも私は予想します。現に「しんじられるきかんしゃ」では、トーマスを載せた艀が重みで沈みかけていましたね。
 ここまで述べてきた論点を整理すると、トーマスが事故を起こしたキャラン池はトーマスの支線上にあり、路線敷設の頃から止むを得ない事情により車両運搬用の鉄道艀が設置されていたが、不具合が生じて前後の線路ごと廃止、代わりに別のルートが使われるようになった。「しんじられるきかんしゃ」では貨車のいたずらにより加速したトーマスが誤ってこの廃線に進入した結果、停止できずに事故を起こした……とでも見るのが最も妥当ではないかと思われます。
 以上、私なりに考えを述べさせていただきましたがいかがでしょうか。

参考資料

□映像
○『きかんしゃトーマスとなかまたち(Thomas and Friends)』ガレイン・エンターテインメントおよびヒット・エンターテインメント制作
・第65話「しんじられるきかんしゃ(Trust Thomas)」
・第67話「トビーのつなわたり(Toby's Tightrope)
・長編第5作『ミスティアイランド レスキュー大作戦!!(Misty Island Rescue)』
・長編第10作『トーマスのはじめて物語(The Adventure Begins)』

□ウェブサイト
Thomas the Tank Engine Wikia
The Island of Sodor Television Series Map
Wikipedia(英語版)
Wikipedia(日本語版)

執筆:2016年8月17日
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Konkon

どうも管理人です。
きかんしゃトーマスが好きなだけの一般人。よろしくお願いします。