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質問箱より Q7「ジャックの顔の形について」

研究・考察
08 /31 2017
○Q
 ホイールローダーのジャックの顔が模型期には丸顔だったにもかかわらずCG版で形状が四角に変更されたのは何故か。

○A
 第6シーズンで初登場し、主にスピンオフ作品を中心として模型時代から活躍してきたソドー建設会社のホイールローダー、ジャック。彼の顔の形状は、顔のみがCG化された第12シーズンまでの間、一貫して円形でした。ところが、長編第8作『キング・オブ・ザ・レイルウェイ』でフルCG版への初登場を果たした際、どういうわけか彼の顔は四角形に変更されていました。これについて劇中での説明なども無論なく、ファンの中には驚いた人も多いことでしょう。何故ジャックの顔の形状は変えられる必要があったのか、それについて考えたいと思います。
 まず、2012年の初めより鉄道顧問として番組制作に携わっているサム・ウィルキンソン氏が、作品ファンサイトSiFからのインタビュー(2015年7月)に答えてジャックの顔の形状に触れています。この部分を抜粋してみようと思います。

62. 見映えに変更が加わったキャラクターもいますね。例えば、今となっては車輪が赤いビルとベンや、顔が円形ではなく四角形をしているジャックがそうです。彼らの外見にマイナーチェンジを施そうというこれらの決定の裏にはどのような理由があったのですか。

(前略)
ジャックについては(CGデザインは)旧チームの下で制作されたのだが、私が番組へ参加した時に取り上げるまで何故か誰も顔の形の変化を指摘しなかった。けれども私が指摘した時には遅すぎたし、それに実際のところ、確かに四角い顔の方がよく似合うんだ。


ここから、ジャックのCGモデルが制作されたのはマテル社がヒット・エンターテインメントを買収した2012年初頭よりも以前、つまりCG制作会社がナイトロジェン・スタジオ(ニトロゲン・スタジオ)であった時代だということがほぼ確実視できるでしょう。また、同社のスタッフがジャックの顔の変化に異を唱えなかったことと、最初は違和感を感じていたであろうウィルキンソン氏のような人でさえ最終的には四角い顔の方が似合っていると感じるようになったことは当人が述べている通りです。
 しかし、ナイトロジェン・スタジオが何の考えもなしに誤ってジャックの形状を変更し、しかも誰も模型時代との違いに気が付かなかったなどということはあり得ないだろうと私は考えます。同社の社長であり番組の監督でもあったグレッグ・ティアナン氏は2011年3月、SiFからのインタビューの中で、自分やスタッフは『きかんしゃトーマス』の全エピソードを視聴したと述べています。当然、モデルデザインの際にも模型時代のビジュアルを参照したでしょうし、第12シーズンで円形の顔をCG化した時のことも記憶していたはずです。それにもかかわらず過去の常識を押し切って顔の形を変更したことにはやはり何かしらの理由があるはずだと私は思うのです。
 ジャックのモデルとなった車両について詳しいことは分かっていません。ファンサイトThe Real Lives of Thomas the Tank Engineは、JCバンフォード・エクスカベーターズ社の農業用トラクターにバケットを追加したものではないかと推測しています。またThomas the Tank Engine Wikiaは、模型期のジャックはモリス・モーターズ社のナフィールド・トラクターにバケットを追加したものであるのに対し、CG期のジャックはインターナショナル・ハーベスター社の454型トラクターをモデルにしているのではないかと推測しており、このモデル変更のために顔の形状も変更されたのだと主張しています。確かに、454型トラクターは他の二種類のトラクターに比べ前部がはっきりと角張った長方形をしており、モデル車両の変更も理由の一つとしては考えられるでしょう。ただ、私としてはもっと決定的な理由があるのではないかと思います。
 ところで、キャラクターの顔の形状には何か規則性のようなものはあるのでしょうか。この点を考えるため、模型期のジャックのように円形かつ平面的な顔をしたキャラクターを考えてみます。するとどうでしょう。少なくとも私の記憶する限り、蒸気機関車以外でそうした顔を持つキャラクターはトレバーと模型期のジャックしか存在しないのです。そもそも蒸気機関車の多くが円形の顔をしている理由は、煙室前面部(顔が付いている部分)が円形である機関車が多いためであり、また煙室前面部が円形である理由は、煙室、もっと言えばボイラーが円筒状の形をしている場合が多いためです。では何故ボイラーが円筒状かと言うと、高温・高圧に耐えられるようにするため。さてトレバーは自動車ですが、彼は蒸気自動車であるため蒸気機関車との共通点も多く、顔が円形をしているのも蒸気機関車と同じ理由によるものです。つまり早い話が、トーマスシリーズにおいて円形の顔を持っている乗り物は基本的に全て蒸気で動いているということになります。蒸気で動いていても顔が円形でないキャラクターは多数存在しますが、顔が円形でありながら動力が蒸気でないキャラクターは基本的に存在しません。そしてその唯一の例外が模型期のジャックというわけです。ジャックはスピンオフ作品の「Mud, Glorious Mud」中において、ディーゼルオイルで動いていることが明言されました。上に挙げたモデルと目される車両の中にも前面部が円形やそれに準ずる形状をしているものはなく、したがってジャックは他のキャラクターと違い、顔が円形であることへの必然性を持っていないのです。
「蒸気機関車は最も人間的な機械である」という有名な言葉の初出がどこかは分かりませんが、私が調べた限りでは『Railroads: The Great American Adventure』の著者チャールトン・オグバーンから取材を受けたアメリカの鉄道技師ビリー・バードの言葉のようですね。それはさておき、蒸気機関車が人間的であると称される理由としては、顔に当たる部分の形状が四角形のように機械的な形状に比べて人間の丸顔を彷彿とさせるものだったことも大きかったのではないかと私は考えます。模型期にジャックの顔が円形とされた理由は不明ですが、スピンオフ作品の主人公の顔を蒸気機関車と同じ丸顔にすることで、ファンが感情移入しやすいよう仕向ける意図があったのかも知れません。
 というわけで、ジャックの顔の形状がCG期に入ってから四角形に変更されたのは、シリーズにおける「丸顔の乗り物は蒸気で動いている」という法則の例外を当時のスタッフが是正しようとしたためではないかと予想します。え、ヒューゴ? あれは丸顔とは言いませんよ。
 以上、私なりに考えを述べさせていただきましたがいかがでしょうか。

参考資料

□文献
○『The Industrial Revolution in America: Iron and Steel』ケビン・ヒルストロムおよびローリー・コリアー・ヒルストロム

□映像
○『きかんしゃトーマスとなかまたち(Thomas and Friends)』ガレイン・エンターテインメントおよびヒット・エンターテインメント制作
・番外編「Mud, Glorious Mud」

□ウェブサイト
Thomas the Tank Engine Wikia
Sodor Island - A Thomas Fan Site
The Real Lives of Thomas the Tank Engine
Wikipedia(英語版)
Wikipedia(日本語版)
Farm Collector

執筆:2016年8月17日
追記:2017年8月31日
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Konkon

どうも管理人です。
きかんしゃトーマスが好きなだけの一般人。よろしくお願いします。