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ソドー島史講義 イントロダクション編「ソドー島とは?」

世界観
04 /13 2020
 ご無沙汰しております。更新頻度が極端に低いことでお馴染みの当ブログですが、今回はおよそ2年半振りの更新となりますね。マジか(ドン引き
 さて、記事のタイトルを見て大体察した方も多いことでしょう。ご明察の通り、今回の記事には『きかんしゃトーマス』本編に関する話題はほとんど出てきません。そう、今回は「汽車の出てこないきかんしゃトーマス」の話をします。

 時は1949年頃。『汽車のえほん』の作者でありのちに『きかんしゃトーマス』の原作者と呼ばれることになるウィルバート・オードリー牧師は、ある日、例によってクリストファー、ヴェロニカ、ヒラリーという三人の子供たちに機関車の話を語り聞かせていました。その日語った内容は、タンク機関車トーマスが自分の支線でバスのバーティーと競争を繰り広げるというもの。父の話を楽しそうに聞いていたクリストファーたちですが、目敏い彼らはやがて一つの問題点を指摘します。「この勝負、道路を走るバーティーの方が不利なんじゃないの?」と。すると牧師は、子供たちのためにトーマスの支線の路線図を描き、競争がトーマスとバーティーの双方に公平なものであることを説明してみせました。
 その後間もなく、牧師は子供たちや読者からの質問に対応するため、トーマスの支線周辺のもっと詳細な地図を描くことになります。更に1950年以降には、トーマスたちが暮らしている島全体の地図まで制作するに至りました。そして、イギリス本土とマン島の間にあるというこの架空の島は、マン島にあるソドー・アンド・マン教区の名に因んで「ソドー島」と名付けられました。
 熱心なファンであれば多くの方が知っているであろう、『きかんしゃトーマス』の舞台ソドー島の誕生にまつわる秘話ですね。これ以降も牧師の熱意は留まるところを知らず、一度制作されたソドー島の地図は折に触れて加筆修正されていきました。また、同時に牧師は図書館司書であった弟ジョージ・オードリーにも協力を仰ぎながら、この島の地理や歴史に関する緻密な設定を数十年にわたって練り上げます。この辺りのこだわりはジャンルやレベルこそ違えど、『ハリー・ポッター』シリーズのJ・K・ローリングや『指輪物語』のJ・R・R・トールキンにも通じるものがありますね。イギリスの作家には設定厨が多いということなのでしょうか……と思ったけど、ジョージ・ルーカスとかも大概か。ともあれそうした努力の集大成として、牧師と弟は1987年、膨大な情報量を収めたThe Island of Sodor: Its People, History and Railways(『ソドー島 その人々・歴史・鉄道』)という設定本を出版しました。この著作には、トーマスたちが暮らすソドー島の鉄道の全貌や人々の姿は勿論、それまで本編で明かされなかった歴史に関する設定もふんだんに盛り込まれています。今回は、この約2,000年に及ぶソドー島の歴史のことについてお話ししようというわけです。
 歴史の話か、何か難しそうだし興味もねーわ、と思ったそこのあなた。その考えは至極真っ当なんですが、ブラウザバックするのは少し待ってもらえますか。確かに、喋る機関車をテーマとする『きかんしゃトーマス』最大の魅力は鉄道の描写にあり、子供たちの多くがそれに惹かれて作品のファンになっているのは間違いありません。幼少期を過ぎてもトーマスを愛好している人間の9割は将来的に鉄道オタクになると最新の研究でも指摘されています(誰によって?)。個性豊かな機関車たちが走り回っていてこそのソドー島なのに、そのソドー島に機関車や鉄道がなかった頃の話なんて何が面白いのか。そう思うのもよく分かります。ですが、考えてもみてください。それでは、同じく筋金入りの鉄道マニアであったはずのウィルバート・オードリー牧師は何故、生涯を懸けてソドー島の歴史の編纂に取り組み続けたのでしょう。鉄道なき島の何が、彼をそれほどまでに惹き付けたのでしょう。その答えをトーマスオタクでありながら全く知らずに過ごすのは、どうも勿体ないと私は思うのです。
 突然ですが、皆さんの住む町にはどんな歴史がありますか。もしかしたら、この土地は江戸時代に何藩だったとか、誰々という武将がこの土地にゆかりがあるとか、そういう話を一度くらいは耳にしたことがあるかも知れません。たとえ耳にしたことがなくても、皆さんが今暮らしている町はほぼ間違いなく、遠い昔に別の誰かが生きていた場所のはずです。そしてたとえ皆さんが普段意識することはなくても、そうした数多の先人たちの存在は必ず何かしらの形で現代にも影響を与えていることでしょう。日本だけでなく、イギリスでも、無論ソドー島の場合でも同じです。
 ソドー島を創作したオードリー牧師は徹底的なリアリストでした。彼は作中の登場キャラクターもストーリーもみんな現実の鉄道や事件に基づいて構想し、そのリアルな物語を展開させるための舞台として、アイリッシュ海に浮かぶ架空の島を創造しました。しかし島の地図を描きながら、当時の彼は恐らくこう思ったことでしょう。機関車たちが走り回るための島をただ用意しただけでは、それは嘘の舞台になってしまう、と。どんな鉄道も、最初から線路が敷かれていたはずはない。トーマスたちがこの島に確かに存在するためには、そこに至るまでの確固たる歴史が必要であると。まあこれは私の想像ですが。ただ経緯がどうあれ、牧師が生涯を費やして編んだ長い歴史があるからこそ、作中のソドー島が一層リアリティ溢れる舞台たり得ているのは紛れもない事実です。原始時代、封建制度、絶対王政、近代化。そうした過去の出来事の全てが、たとえ作中で直接触れられることはなくても、現在のソドー島の土地や言葉、人々、そして機関車に随所で影響を及ぼしている。そのことは、この記事を読み進めるにつれ皆さんにも少しずつご理解いただけるのではないかと思います。

 まあそうは言っても、やはり中高生の時に日本史や世界史があまり得意ではなかった、もしくは現在進行形で得意でないような人は、歴史と聞くだけで何となく小難しそうな印象を持ってしまうかも知れません。まして架空の島の、それも日本人からしたらさほど身近でない遠い国にある島の歴史ですからね。信長や秀吉が関わってくるならまだしも、ヘンリー4世やらヴィクトリア女王やらが出てきたところで多くの人はいまいちピンとこないというのが正直なところだと思います。
 一方ソドー島史に多少興味がある人でも、もしかしたらこんな風に考えるかも知れませんね。どうせThe Island of Sodor: Its People, History and Railwaysという公式の設定本があるのなら、こんなブログ記事ではなく最初からそれを読めばいいじゃないかと。確かにその通りです。しかし残念ながらこの本はかなり希少で、容易に入手できる代物ではありません。また、ネット上には海外のファンがこの本の内容を基に編集したと思われるThomas the Tank Engine WikiaSiFのブログといったサイトがありますから、そこから情報を得ることもできます。しかし、英語が苦手だからという理由でどうしても敬遠してしまう方もいることでしょう。この記事の第一の狙いは、そういう人たち、つまり今までソドー島の歴史にあまり触れる機会がなかった人たちに向けて、それらを「日本語で」紹介するということにあります。
 そして第二の狙いは、一見複雑そうに思われるソドー島の歴史を、可能な限り「分かりやすく」説明すること。実を言えば、私自身もThe Island of Sodor: Its People, History and Railwaysは所持していません。手元にある情報源は上に挙げたWikiaやSiFブログと、あとは精々Wikipediaくらいのもの。ですがその代わり、歴史に関して言えば、私は他のトーマスファンの方がまず持っていない量の知識を備えていると自負しています。何故なら私には、他のトーマスオタクがことごとく鉄オタになっていくのを横目に一人だけ世界史にハマり、挙げ句の果てにヴァイキング史ガチ勢になってしまったという哀れな実績(?)があるからです。ちなみに、私は過去にもソドー島の歴史に関する解説記事をこのブログに載せたことがあるのですが(数えたら6年以上も前でした。やべえ)、その時はまだ私の知識や能力が不足していたこともあって、Wikiaの内容をほぼそのまま訳しただけの中途半端なものになってしまいました。今回は6年の研鑽を活かし、情報源の単なる翻訳に留まらず、例えばソドー島以外の周辺地域の情報等も背景として適宜記載するとか、イギリスの歴史に明るくない人でもなるべく理解しやすい内容になるよう努めたいと思っています。

 というわけで、だいぶ前置きが長くなりました。繰り返しになりますがこの記事の趣旨はずばり、トーマスをきっかけに世界史オタクを拗らせた異端児である私が、ソドー島の知られざる歴史をトーマスファンの皆様に分かりやすく紹介・解説することにあります。オードリー牧師と弟ジョージの手になる2,000年分の架空史は、もはやそれ自体が一つの壮大な大河ドラマであり、「現実にもこんな歴史が存在したかも」と思わせる魅力と迫力とを備えています。同時に現実の歴史と実際にリンクする側面も多分に含んでおり、その意味で彼らの営為は創作の域を超えた一大研究とも言えるかも知れません。そうした奥深い世界の存在を、当記事を通して少しでも知っていただけたら幸いです。


 さて早速ですが、皆さんはソドー島のことをどれくらい知っていますか?
 今回はいきなり歴史の話に入る前にまず、現在のソドー島がどんな島なのかを軽くお浚いしておくとしましょう。地理のお勉強です。原作『汽車のえほん』やテレビ版『きかんしゃトーマス』本編に出てくるソドー島には、一体どのような特徴が見られるのか。我々の住む日本や、イギリスの他の地域とはどう違うのか。それをいくつかの項目に分けて確認していくうちに、島の歴史を理解するためのヒントのようなものも浮かび上がってくるのではないかと思います。

○位置と大きさ
 まず、ソドー島がどこにある(という設定になっている)かを確認しましょう。皆さんの手元に世界地図はありますか? Googleマップでも構いません。それを開いて、日本よりずっと西、ヨーロッパの辺りに目を向けてみてください。すると、大陸から海峡を隔てた北西の位置、つまりフランスの左上の所に二つの島が浮かんでいるのが分かりますよね。二つのうち、右にある大きめの島がグレートブリテン島、左のやや小さめの島がアイルランド島。これらが、今日一般にイギリスやアイルランドと呼ばれている国々です。え、そんなことはもう知っているって? まあそう言わずに、もう少しばかりお付き合いください。このグレートブリテン島とアイルランド島を隔てる海がアイリッシュ海(アイルランド海)と呼ばれているのですが、その海のちょうど真ん中にぽつんと浮かんでいる島がありますね。これがマン島。そして作品の設定上、ソドー島はこのマン島とグレートブリテン島の間に挟まっているということになっています。
 挟まっていると言ってもソドー島とマン島の間には数kmほど距離があるのに対し、ソドー島とグレートブリテン島本土の間は数十m程度しかなく、後者とはほぼ接している形になりますね。作中、機関車たちがヴィカーズタウン橋を使って簡単にソドー島と本土を行き来できるのはそのためです。また、ソドー島と接している本土側の町の名前はバロー=イン=ファーネス。テレビ版19期「あかとあおのたいけつ」でソドー・ユナイテッドの対戦相手として登場したサッカーチームの本拠地バローがそれで、原作にもこの町の様子がちょくちょく出てきます。ちなみに、現実の地図ではバローの中心部より南西にウォルニー島という細長い島もありますが、作中ではソドー島の東部がウォルニー島を丸ごと含む形になっています。ソドー島東端の町ヴィカーズタウンがウォルニー島の町ヴィッカーズタウンをモデルとしているのがその証拠と言えるでしょう。
 ソドー島の西端から東端までの距離は約62マイル(約99.8km)、北端から南端までは約51マイル(約82.1km)で、島全体の面積は約1,298平方マイル(約3,361.8平方km)です。日本の都道府県で言えば面積41位の鳥取県より少し狭いくらい、島で言えば択捉島より少し広いくらい。これはイギリス周辺にある島のサイズとしては結構大きい方で、グレートブリテン島とアイルランド島を除けば英国内にこれより大きい島は存在しません。同じく島国である日本を見ても、ソドー島より大きい島は四国、九州、北海道、本州の四つだけ。ちなみにお隣のマン島は面積572平方kmなので、ソドー島はその6倍近い大きさがあるということになりますね。

○風土
 ソドー島の風土、とりわけ気候については、イギリス本土やマン島といった周辺の他の地域からおおよそ推測することができます。
 例えば作中の描写を見ても分かることですが、日本と同じように当然ソドー島にも四季があります。夏には海水浴、秋には紅葉、冬には降雪の場面がありますしね。ケッペンの気候区分によれば、ソドー島周辺の地域は温帯の西岸海洋性気候に分類され、偏西風やメキシコ方面から流れてくる北大西洋海流の影響を受けるために冬は比較的温暖です。また夏は夏で涼しいので、基本的に気温の年較差は少ないと言えるでしょう。どちらかと言えば湿潤で、雨も年間を通して降りますが、特に秋から冬にかけての降水量が多いようです。霧もしばしば発生し、冬には雪も一定の頻度で降ります。日本との特に大きな違いは、夏でもあまり暑くならない点でしょうかね。
 ソドー島には森がいくつか存在しますが、上記のような気候から察するに、島に自生している木は多くが落葉広葉樹か、もしくは常緑針葉樹と思われます。島内には森林以外に河川や湖も多く自然豊かで、後述するように天然資源もそこそこ産します。しかし一方で、可住地面積、つまり人が住むことのできる土地の割合もかなり高いようです。何故ならば、ソドー島は全体的に標高が低く土地が平らだから。島の中に険しい丘や山岳はほとんどありません。北部にある最高峰カルディー・フェル山(カルディー山)には登山鉄道が走っていますが、それでも標高は2,048フィート(約624.2m)で、東京スカイツリーよりも低いのです。なお、これはマン島の最高峰スネーフェル山の標高2,037フィート(約620.9m)とほぼ同じ高さでもあります。風土に限らず、ソドー島は民族や言語など色々な面でマン島との共通点が何かと多いですから、マン島のことを知っておくとソドー島の雰囲気も掴みやすいかも知れませんね。勿論、歴史に関しても二つの島はとにかく似た特徴を持っていると思ってもらって構いません。
 さてこのようにして見ると、気候にせよ地勢にせよ、ソドー島は多くの意味で人間が生活するのにかなり適した環境であると言えそうですね。……で、それが島の歴史とどう関係あるのか、と思いましたか? 意外とあるんですよ、これが。

○周辺地域
 せっかくなので、ここでソドー島以外の地域のことにも触れておきましょう。既に述べたように、ソドー島およびマン島の周りにはグレートブリテン島とアイルランド島という二つの大きな島があり、これらは総称してブリテン諸島とも呼ばれます。そしてこれまた既に述べたように、これらの島々を領土とする二つの国家がイギリスとアイルランドです。ところで皆さんは、ブリテン諸島のうちどこからどこまでがイギリスでどこからどこまでがアイルランドなのか、しっかり把握していますか?
 イギリスの正式名称はグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国。つまり、グレートブリテン島全土とアイルランド島北部という領域に跨って存在している王国がイギリスであり、残るアイルランド島南西部がアイルランド共和国という別の国家になるわけです。ちなみに、「イギリス」という呼称はInglês(ポルトガル語でEnglishの意)から発した日本独自の呼び名であって、国際的にはUK(連合王国)という通称で呼ぶのが一般的。
 で、ここからが重要です。連合王国なんて呼ばれるのには当然理由がありまして、というのも、イギリスはグレートブリテン島にある三つの国(カントリー)とアイルランド島にある一つの国が合わさってできている大きな国家という扱いなんですね。三つの国とはすなわちイングランド、ウェールズ、スコットランド、一つの国とはすなわち北アイルランドのこと。え、ウェールズやスコットランドってイギリスの中にあるただの地方の名前じゃないの、と思った方もいるでしょう。その認識でも間違いではないんですが、ただ日本の関東や関西といった地方とはちょっと違う、もっと高い独立性を持った「国」に近い存在と考えた方がいいかも知れません。後の方でも扱いますが、歴史的に見ればこの四つの地域は元々全く別の国家であったのが、時代が下るうちに同じ王の下で統合され一つの大きな主権国家を成立させるようになったという来歴を持っています。そのため、同じイギリス内であっても四つの地方それぞれで言語や文化、政治体制や土地柄などがまあまあ異なっており、イングランドから見ればウェールズ、スコットランド、北アイルランドは半ば外国のような存在として認識されているのです。現に最近も、スコットランドの独立にまつわる問題がかなり盛んに議論されていましたよね。日本で言えば、北海道の人たちが本州とは違う言葉や法律を使っていて、なおかつ日本からの独立を主張しているようなものでしょうか。的外れだったらごめんね北海道民。
 さて、四つの地方のうちグレートブリテン島の南部から中部にかけて広がるイングランドは、『きかんしゃトーマス』本編では主に「メインランド」の呼び名で何度か登場しています。首都ロンドンをはじめ、ソドー島に最も近い町バロー=イン=ファーネス、1期「フライング・キッパー」でヘンリーが改造を受けた町クルー、トーマスの出身地ブライトン、『とびだせ!友情の大冒険』に登場した町ブリドリントンなどもみんなイングランドに含まれます。一方、イングランドの西に位置するウェールズは、1期「ヘンリーのせきたん」に登場した特別な石炭の産地として知られていますね。原作ではその他にもいくつか登場場面があるのですが。また、イングランドの北に位置するスコットランドは何と言っても「スコットランド出身の双子の機関車」の件で度々言及されるので、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。フライング・スコッツマンの名前(=「空飛ぶスコットランド人」)の由来となったのもこの地域です。北アイルランドおよびアイルランドについては作中に出てくることがほとんどありませんが、ソドー島の歴史には意外と深く関わってくる地域ですので覚えておきましょう。
 先ほど「風土」の項でソドー島やマン島は全体的に標高が低いという話をしましたが、これはイングランドと南北アイルランドの風土にも大体当てはまります。イングランドの北部や西部とアイルランドの海岸部には若干の山地があるものの、その他の大部分は低地です。これに対し、ウェールズは領土のほとんどが山岳地帯であり、スコットランドも南部にローランド(低地)と呼ばれる地方が一応あるとはいえ、それ以外のハイランド(高地)地方を中心にやはり山がちな地形が広がっています(ちなみにドナルドとダグラスが働いていたのはローランド)。広大な低地、峻険な山岳地帯、あるいは海によって隔てられた島。同じブリテン諸島の中でも、地域ごとの環境は結構バラエティに富んでいることが分かりますね。そしてこうした地理的な特徴は、それぞれの土地にどんな人々が住み、どのような生活を営んできたかという歴史を知るための手掛かりにもなり得るわけです。
 なおグレートブリテン島とアイルランド島の周辺には、ソドー島やマン島の他にも大小6,000以上もの島々(うち有人島は約200)が存在し、これらもまたブリテン諸島の一部とされています。ここではその中でもソドー島の歴史に関係あるものとして、オークニー諸島とヘブリディーズ諸島の名前だけ押さえておきましょう。どちらも現在はスコットランドに属する島々で、オークニー諸島はスコットランド本土の北、ヘブリディーズ諸島はスコットランド本土の西に位置しています。
 ついでにイギリス以外の国のことも少しだけ見ておきましょうか。地図でブリテン諸島より500kmほど北東に目を移すと、ノルウェーやデンマークなどの国がある地域、いわゆる北欧があります。オークニー諸島やヘブリディーズ諸島もですが、これらは主に中世の半ば辺りでソドー島の歴史に深く絡んでくる地域ですので、大まかな位置くらいは確認しておいてください。

○法的地位
 法的地位、なんて言うとちょっと難しい響きがしますが、要するにソドー島がイギリスに対しどういう立ち位置にある島か、という話です。例えば、佐渡島は日本という国の新潟県という県に属する島で、それ自体が佐渡市という市を形成しています。
 4期の「じょおうへいかがやってくる」でイギリス女王エリザベス2世がソドー島を訪問した時の描写などを見ても、ソドー島がイギリスという国に帰属しているのはほぼ確実です。が、島の地位が具体的にどのようなものなのかは作中の描写を見ただけではよく分かりません。例えば『走れ!世界のなかまたち』でのソドー島は独自の旗を掲げ、メインランド(イングランド)とは別の国としてグレート・レイルウェイ・ショーに参加していました。
 参考として、隣のマン島の例を見てみます。マン島は独立国ではありませんが、かと言ってイギリスの一部でもなければイギリス連邦(旧イギリス植民地であるカナダ、オーストラリア、インドなどからなる国家連合)にも加盟しておらず、一応イギリス政府の統治は受けているが一方で独自の法律や議会を有してもいる……という何ともよく分からない島です。法的には「自治権を持ったイギリスの王室属領」と定義されています。イギリスの女王陛下を元首に戴いてはいるけど、自分たちのことは自分たちで決めるよ、という感じですね。となると、マン島と似通った部分の多いソドー島もこれと同じような複雑な地位にあるのでしょうか。ところがどっこい、ソドー島とマン島の間には一つ大きな違いがあります。それは、ソドー島を走っているノース・ウェスタン鉄道がイギリス国鉄の一部として扱われている(いた)ことです。18期の「スペンサーとふくだいじん」でも、ノース・ウェスタン鉄道の局長であるトップハム・ハット卿がメインランドから来たイギリス政府の副大臣によって表彰を受けていましたね。この件を考慮すると、やはりソドー島はマン島ほどにはイギリスからの独立性が高くない島と言えそうです。
 第一マン島に与えられている王室属領という地位は実際のところかなり特殊なもので、ブリテン諸島にある他の島々は、普通はイギリス内ないしアイルランド内のいずれかの行政区画に含まれています。もしソドー島の場合も同様だとすれば、バロー=イン=ファーネスと同じくイングランドのカンブリア州に属している可能性が高いでしょう。ただ他の島の例から考えると、ソドー島だけで一つの州を形成している可能性もあります。はたまた島の規模的に、ウェールズやスコットランドと同じような一つの「国」と見なされているという線もあるかも。
 ちなみにですが、テレビ版には時折「ソドー島の市長」なる人物が出てきますね。ソドー島の中には町がいくつもあるのに、何故市長は島全体で一人だけなのか? そう疑問に思う方もいるかも知れません。ですがそもそもイギリスにおける市長は、単独で大きな権限を持ち市政を統括するアメリカや日本の市長とはかなり性質が異なるのです。イギリスの「市長・町長(メイヤー)」という役職は、公式行事の場で代表を務める等の役目を主とする名誉職のようなもので、市議会議長が兼任することが多いとされます。なるほどそれを考えれば、ソドー島の市長の存在にも納得がいくというものです。ソドー島には島全体を統括する議会がありますから、恐らくはソドー島議会の議長が本職とは別に名目的に務めているのが「ソドー島の市長」という島を代表する役職なのでしょう。

○住民
 だいぶ込み入った話題が続いてしまったので、今度はもっと単純な話をしましょう。ソドー島には何人の住民が住んでいると思いますか?
 答えは、約17万7,000人(1951年現在)。単純な数だけなら、現在の東京都立川市や青森県弘前市の人口と同じくらいです。ちなみに1951年時点でのマン島の人口が約5万5,000人でしたから、ソドー島はその3倍以上の住民を抱えていることになります。おまけにマン島の人口が70年で約8万5,000人(2020年現在)まで増加したことを考えると、現在のソドー島の人口は25万ぐらいいっててもおかしくなさそうですね。とはいえ、ソドー島の面積がマン島の6倍もあることを忘れてはいけません。1951年時点でのソドー島の人口密度は約52.65人/平方km。仮に人口が25万人まで増えたとしても約74.36人/平方kmです。かなり低めですね。しかも後述するようにソドー島の人口の多くは都市部に偏っていますから、島の中でも田舎な場所にはとことん人がいないという状態なのではないかと思います。
 さて、それではまた少し込み入った話に入ります。次の質問ですが、ソドー島には何人(なにじん)の住民が住んでいると思いますか?
 恐らくイギリス人と答える方が多いでしょう。勿論正解です。あるいはソドー島人という答えもありかも知れません。イギリスという国の国民だからイギリス人、ソドー島という島の島民だからソドー島人というわけですね。しかし、ではソドー島に住んでいるのは何という民族か、と聞かれたら、皆さんは答えられますか? そもそも「民族」って何でしょう?
 民族=人種、ではありません。人種とは、皮膚の色や骨格などの身体的な形質によって人類を区分したもののこと。例えば日本人のほとんどはモンゴロイド(黄色人種)であり、ソドー島の人々はほとんどがコーカソイド(白色人種)です。近年では白人以外の人種(特に黒人)も島内に存在することが頻繁に描写されていますが。ともあれ、こうした身体に基づく分類と「民族」は異なります。
 民族=国民、でしょうか。残念ながらこれも少し違います。国民とは、国家という政治的な共同体を成り立たせる構成員のこと。これに対し民族は、土地・血縁・言語・宗教といった文化的な特徴を共有する人間集団を指す言葉です。日本は大和民族が国民の大多数を占める単一民族国家とされている(異論もあります)のでイメージが湧きにくいかも知れませんが、世界的には国民と民族が必ずしも一致しない多民族国家も沢山あります。イギリスがその典型例です。イギリスの国民は全員イギリス人ですが、イギリス民族という民族は存在しません。イギリスの主な民族にはゲルマン系のイングランド人(アングロ・サクソン人)とケルト系のウェールズ人、スコットランド人、アイルランド人があり、それぞれイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドに多く居住しています。一方お隣のアイルランドは国民のほとんどがアイルランド人という同一の民族なので、その意味では幾分か日本に似ていますね。またマン島人という民族(ケルト系)も存在し、これもやはり多くがマン島で暮らしています。ただしマン島の場合は、元から島に住んでいたわけではないイングランド人やアイルランド人の住民の割合もかなり高い模様。
 では肝心のソドー島は? と聞かれたら、マン島と同様にソドー島人という独自の民族が存在するのだと言えそうです。ソドー島人はマン島人やアイルランド人と同じケルト系の民族で、英語表記はSudrian(サドリアン)。ただしソドー島の場合もマン島と同様に、最近になってイングランドやアイルランドから移住してきた異なる民族系統の住民も少なからずいると思われます。
 ケルト系の民族とはどういうものか? その一つであるソドー島人とはいかなる民族で、どのようにして形成されてきたのか? そういった疑問への答えも、ソドー島の歴史を紐解いていく中でだんだん明らかになることでしょう。

○言語
 作中の描写からも分かりますが、ソドー島の公用語はゲルマン語派に属する英語です。イギリス内の他の地域も基本的に英語を公用語としていますから、まあ当然ですね。
 しかしながら、これまで述べてきたようにイギリスは地域によって文化や民族の大きく異なる国です。無論、言葉に関しても例外ではありません。特にイングランドの中心部から離れた地域には、ゲルマン語派に属するスコットランド語やケルト語派に属するウェールズ語、アイルランド語、スコットランド・ゲール語、コーンウォール語、マン島語といった土着の言語が存在し、それぞれの地域で今も母語もしくは第二言語として使用されています。作中に登場するドナルドやダグラスの訛りがやたらと強いのも、スコットランド語の影響を受けているためです。
 とはいえ、何せ英語という言語の普及率があまりにもえげつないものですから、上に挙げたような言語は近代以降どんどん使用人口が少なくなっていき、いずれも21世紀に入るとユネスコの消滅危機言語リストに登録されました。危険度はスコットランド語とウェールズ語が「脆弱」、アイルランド語とスコットランド・ゲール語が「危険」、そしてコーンウォール語とマン島語が「極めて深刻」とのこと。なおマン島語は母語としては1974年に一度消滅しましたが、地元住民の間で再生のための努力が重ねられた結果、現在では2,000人ほどの人々が英語と並んでマン島語を用いています。
 で、こうした各地域に特有の少数言語というものがソドー島にも存在します。それがソドー島語(サドリック語、Sudric)。系統としてはケルト語派の中でもゲール語(アイルランド語、スコットランド・ゲール語、マン島語などの総称)に近く、更にその中でも特にマン島語に酷似した言語です。どれくらい似ているかというと、ソドー島語の話者とマン島語の話者がそれぞれの言語で話しても互いに意思疎通が可能なレベルだとか。また近年ソドー島語もやはり消滅しかけているということで、恐らくは消滅の危険度もマン島語と同じくらいなのではないでしょうか。ソドー島語を日常的に話している住民はほぼいませんが、島の地名なんかにその名残が多く残っています。原作10巻『4だいの小さな機関車』の前書きでは、スカーロイとレニアスの名前の由来となった地名がそれぞれ「森の中の湖」「幾筋にも分かれた滝」を意味する旨が述べられていましたね。これらもソドー島語にルーツを持つ地名の一つです。
 ソドー島語という言語はいつ、どのようにして出来上がったのでしょうか。そして何故、英語がソドー島語に代わる新たな公用語となったのでしょうか。ソドー島の歴史は、ソドー島の言葉の歴史でもあります。

○宗教
 ソドー島では住民のほとんどがキリスト教を信仰しています。作中にも牧師や教会が出てきたり、機関車たちがクリスマスを祝う場面があったりしますね。まあキリスト教徒の少ない我が国でもクリスマスは当たり前に祝われますが、そこは神社へ初詣に行って教会で結婚式を挙げてお寺で葬式を執り行っておきながら「無宗教です」と言っちゃったりする日本人がちょっと特殊ということで。
 さて多くの人は、キリスト教にカトリックやプロテスタントや正教会といった複数の教派(宗派)があることを学校等で習ったのではないでしょうか。かなりざっくり言ってしまうと、信徒が南西ヨーロッパや中南米に多いのがローマ・カトリック教会、北西ヨーロッパや北米に多いのがプロテスタント、東ヨーロッパに多いのが正教会(ギリシャ正教)という感じになります。各教派の違いは教義とか制度とか色々ありますが、分かりやすい例としては指導者の呼称および地位の違いが挙げられるでしょう。教会に所属し人々を教え導く立場の人を、カトリックや正教会では「司祭」(いわゆる神父)と呼ぶのに対し、プロテスタントでは「牧師」と呼びます。司祭は一般信徒の上に立って神に生涯を捧げる聖職者ですが、牧師は一般信徒と対等な立場にいる教師のような存在です。また、カトリックの司祭が原則として独身を貫くのに対し、正教会の司祭やプロテスタントの牧師は妻帯が可能。とまあこんな具合に同じキリスト教でもその中身は教派によって様々なわけですが、それでは、当のソドー島にはどの教派の信徒が多いのでしょうか。
 ソドー島の住民は、大半がイングランド国教会(聖公会)と呼ばれる教派を信仰しています。イングランド国教会は分類としてはプロテスタントに含まれることが多いものの、他のプロテスタント諸派に比べればだいぶカトリック寄りであるとも言われる教派です。ソドー島内には地図等から分かるだけでも30近い数の教会がありますが、恐らくほぼ全ての教会がこのイングランド国教会に属するものと考えて良いでしょう(ただし、国教会から分離したメソジスト等の教派を信仰している住民も一部地域に存在するようです)。イングランド国教会、と言うぐらいですから、当然この教派はイングランドにおいても国教として広く信仰されています。イングランドで生まれ育ったウィルバート・オードリー師自身も、他ならぬ国教会に籍を置く牧師でした。しかし同じブリテン諸島内でも、イングランドやウェールズ以外の地域では別の教派の勢力が強かったりもします。例えば、スコットランド国教会はプロテスタントの中でも長老派という別の教派に属する教会です。また、南北アイルランドではプロテスタントよりもカトリックの方が主流。他方で、マン島についてはソドー島と同じくイングランド国教会の影響下にあります。
 地域ごとの信仰の差が大きいブリテン諸島のど真ん中にあって、何故ソドー島やマン島では多くの人々が、長老派でもカトリックでもなくイングランド国教会を信仰しているのでしょうか。当然、ここにも歴史的な背景が大きく関わっています。今でこそイングランド国教会が主流のソドー島ですが、何百年も前には別の教派や、更にはキリスト教以外の宗教が大勢を占めていた時期もあったのでした。

○都市
 ソドー島には沢山の町や村がありますが、皆さんはいくつ名前を言えますか? また、その中でも特に重要な町や大きい町はどこだと思いますか?
 あまり知られていませんが、ソドー島の政庁所在地、つまり首都に当たるのは南西部にあるサドリーという町です。どこやねんそれ、と思う方もいるかも知れませんね。エドワードの支線の沿線に位置している町で、作中に登場する機会は少ないものの、20期の「はりきりすぎたジェームス」や21期の「あいだにはいったエミリー」で名前が出てきます。また名前こそ言及されないものの、2期の「おいかけるバーティー」や「こわれたブレーキ」にサドリー駅という駅が、1期「パーシーにげだす」や6期「ジャックフロスト」などにはロアー・サドリー駅という駅が登場しています。しかしそれにしても、どうしてこんなパッとしない町が島の首都扱いなんでしょうね? ただまあ、行政の中心だからといって必ずしもそれが特別大きい町とは限りません。では、ソドー島最大の都市はどこなのでしょうか。答えはティドマスです。こちらは作中でも機関車たちの機関庫がある町として頻繁に登場していますので、納得される方も多いでしょう。ティドマスは元々は小さな港町でしたが、造船や漁業、鉄道の拠点として近代以降急速に発展してきた結果、1951年の時点では島全体の人口の約2割に当たる3万5,000人が集中する立派な都市となっています。
 他に多くの人が名前を知っていそうな町としては、本線とトーマスの支線の合流点にある西部の港町ナップフォード、同じく南西部の港町でエドワードの支線の終点にあるブレンダム、イングランド本土との境にある東端の町ヴィカーズタウンなどが真っ先に挙げられるでしょうか。勿論、作中にはそれ以外にも数え切れないほど多くの地名が出てきますね。例えば、ゴードンの丘の最寄り駅がある中部の村マロン。本線とエドワードの支線の分岐点で、「エドワードの駅」と呼ばれる駅がある西部の村ウェルスワース。8期「トーマス、きゅうばをすくう」で初登場した南東部の町ケルスソープ。飛行場がある西部の村ドライオー。海に面した東部の町ノランビー。本線と高山鉄道の連絡駅や整備工場がある南東部の町クロバンズ・ゲート。ノランビー伯爵の城がある西部の山村ウルフステッド。トーマスの支線の終点で採石場がある西部の村ファーカー。ダックの支線の終点にある西部の港町アールズバーグ。海辺の行楽地である北西部の町ハーウィック。エトセトラエトセトラ。
 更にマニアックなファンであれば、作中にはほぼ出てこないキルデイン、バラフー、カーク・ローナン、ピール・ゴッドレッド、クロスビー、クロンク、ロルフズ・キャッスルといった町の名前もご存じかも知れませんね。ちなみにキルデイン駅は10期「ジェームスは2ばんめ」に、バラフー駅は6期「たかがゆき」に、カーク・ローナン駅は5期「ゴードンのまど」「ハットきょうふじんのたんじょうび」等に、ピール駅は9期「モリーのとくべつなにもつ」「ドタバタミルクシェイク」等に、クロスビー駅は2期「とこやにいったダック」や5期「バイバイ ジョージ!」等に、クロンク駅は6期「やりすぎたジャック」「こまったときのともだち」等に、ロルフズ・キャッスル駅は7期「あたらしいなかまエミリー」「オリバーとゆきだるま」等にそれぞれ登場していますので、暇な人は探してみるのも面白いでしょう。
 このようにソドー島の中には、それぞれ異なる特徴を持った町や村が山ほど存在しています。これらはどのようにして生まれ、島の長い歴史の中でどのように成長してきたのでしょうか。一つ一つの町にも、作中の描写からだけでは知ることのできない意外な秘密が潜んでいるはずです。

○産業
 他の国や地域と同じようにソドー島にも沢山の仕事があり、その中で生産や消費が行われ、人やお金が動くことによって経済が成り立っています。
 オードリー牧師の弟ジョージは、ソドー島に産業や交通の状況が似ている場所としてウェールズ南西部のペンブルックという町を想定しており、島の面積や人口もそれを参考に設定したそうです。では、ペンブルックをはじめとするウェールズの経済力はどの程度のものなのか? それを知るためにブリテン諸島の主な国・地域における一人当たりのGDP(国内総生産)を比較してみると、最も高いのはアイルランド、次いでイングランド、スコットランド、北アイルランドときて、ウェールズは最下位となっています(ちなみに日本はスコットランドより少し下くらい)。ここから、地域ごとの経済格差が大きいブリテン諸島の中でも、ソドー島はどちらかと言えばあまり豊かではない地域だと言えそうです。なお余談ですが、逆にソドー島の隣のマン島は一人当たりのGDPがアイルランドよりも上で断トツの高さとなっています。これはマン島がいわゆるタックスヘイヴン(租税回避地)であることが理由だと考えられますから、ソドー島も同じようにタックスヘイヴンであるならばワンチャンあるかも知れません(何がだ)。
 話が逸れました。それではソドー島の具体的な産業について見ていくとしましょう。やはり田舎だからと言うべきか、ソドー島では一次産業が比較的盛んです。農業では燕麦(オーツ麦)、大麦、カブなどが主要な作物として栽培されており、牧畜も広く行われています。作中にも、農場で働く農夫やトラクターの他、羊、牛、鶏といった家畜がよく登場しますよね。また、ソドー島は海に囲まれていますから漁業も有名です。中でも特産品はニシンで、こちらもフライング・キッパーのような貨物列車で輸送される描写が頻繁に出てきます。鉱業では鉛や亜鉛、銀などが昔から採掘されている一方、近年では石材(スレート)、陶土、砂利(バラスト)、ボーキサイトなどの採掘・加工も主流となってきています。石切場や鉱山で起こる様々な事件も作品にとってはお馴染みですね。加えて二次産業としては、ティドマスのような港町で行われる造船をはじめとした重工業が特徴と言えるでしょう。
 ですが何と言っても、注目すべきは三次産業です。観光地として定評を得ているソドー島では、行楽客をターゲットとする旅行業、宿泊業、そして運輸業といったサービス業の収入が重要な財源となっています。その好例として高度に発達した鉄道網の存在があることは、皆さんも既によくご存じの通り。中でもトーマスやパーシーが働く標準軌のノース・ウェスタン鉄道(いわゆるソドー鉄道)は旧イギリス国鉄支局でもあり、時に住民の生活の足として、また時に観光客の旅のお供として、多くの面でソドー島の動脈とも呼べる役割を果たしています。それに接続する東部のスカーロイ鉄道(高山鉄道)、北東部のカルディー・フェル鉄道(登山鉄道)、北西部のアールズデール鉄道(ちんまり鉄道)といった各地の狭軌鉄道も、観光や鉱業という形でそれぞれ島の経済に貢献しています。
 産業革命の発端となった国イギリス。その辺境に位置するソドー島の歴史を語る上では、こうした島の中の経済や鉄道がどのような変化を遂げてきたかというテーマも当然欠かせません。


 さてさて、現在のソドー島という島にまつわるあれこれを概観してきましたが、いかがだったでしょうか。歴史に関係ないこともちょこちょこ書いていたら思ったより長くなってしまいました。果たして、ここまでちゃんと読んでくださった物好きな方が何人いることやら。
 ですが何はともあれ、ソドー島がどんな島なのか、これでかなり詳しい部分まで理解していただけたのではないかと思います。ということで次回からはいよいよ本格的に歴史の話に入ります。6回にわたり古代から現代までのソドー島の姿に迫っていく予定ですので、今回最後まで読んでくださった方はぜひ次回以降もお付き合いいただけたら幸いです。




あとがき(読みたい人だけ読んでください)
 ……と、ここまでの文章を書き終えたのが今からおよそ二か月ほど前になります。
 実を言うと当初の予定では、このソドー島史に関する記事は今回を含め全7回分、最初から最後まで書き溜めた上で一気に放出するつもりでいたんです。理想としては4月中にでも書き終えて、GWみたいな長期休みの時期とかに上げれば皆さんにも読んでもらいやすいかなーというイメージで。まあ結論から言うと無理だったんですけど。
 文章を書くこと自体は自分でも得意な方だと思ってますが、なにぶん筆が遅いんですよね。おまけに、ここまで読んでくださった方は分かると思いますが内容のカロリーもかなり高めだし。やっぱこういうブログの記事をパパッと書いて頻繁に更新できる人ってマジで尊敬(&嫉妬)します。まあ、本来ブログってそういうものなんでしょうが。ともかくそんなわけで、何日もかけてイントロダクション編を書き終えた私はその時点ですっかり燃え尽きてしまい、以降ろくにモチベーションが上がらなくなってしまいましたとさ。あ~全く何てこった!
 したがって、おかげさまで次回以降の記事にはまだほぼ手を付けておりません。まあGWと言わずもっと先まで時間を取って書き進めるという考えもありましたが、果たしていつまでかかるか分からないし、せっかく書いたものをその間ずっと温めておくのも何だかなーと。まして今はコロナの影響で暇を持て余している人もいることでしょうから、どうせならそうした方の時間潰しにもなればと思いイントロダクション編だけ一足先に公開させていただいた次第です。ですから次回の更新がいつになるかは分かりません。幸か不幸か私は未だに学生ですし(留年したわけではないです)、またこのご時世ですから時間自体はある方だと思うんですが、他に色々やるべきことがありどうしてもそちらに優先順位とモチベを持ってかれてしまってる感じですね。とか言いつつ、この二か月間のうち半分以上はアニメ見るか漫画読むかしてたんですがね。ちなみに昨日は出場者の5人に1人がトーマス出演経験ありのドリームマッチを見ながらゲラゲラ笑ってました(隙自語)。
 そうそうアニメと漫画で思い出しましたが、ソドー島の歴史に少しでも興味のある人はこの機会に一度『ヴィンランド・サガ』という漫画を読んでみてください。2005年から連載されているヒット作です。昨年アニメ化もされたのでそっちを見ても良し。6年ぐらい前に初めて読んで以来個人的に大好きな作品なんですが、アニオタ率高いはずのトーマスオタクがどうやら一人も見てないっぽくてちょっと悲しかったです。めっちゃ面白いので、騙されたと思ってぜひ。
 閑話休題。とにかくそういった具合ですから、「いよいよ本格的に歴史の話に」などと言っておきながら、ソドー島史の本題についてお話しできるのはまだ少し先になるものと思われます。中途半端なところでお預けとなってしまい申し訳ない限りですが、そしていつ更新できるのか私にも分かりませんが、どうぞ気長にお待ちいただければ。

 ということで次回は
「フィリップとニアとレビュアーズ」
「スカーロイが悪いんだよ」
「ガブリエラは告らせたい?~ブラジリアンの恋愛頭脳戦~」
の三本です。お楽しみに!(自棄)
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Konkon

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きかんしゃトーマスが好きなだけの一般人。よろしくお願いします。